2023年 第10回水族館シンポジウム
学びのデザイン課 大和淳
● 問題意識(課題)
問題意識として、大きく5つの問題意識を持っている。
① 水族館(動物園でも)の機能として環境教育があるとされている。「環境教育の目的は、持続可能な社会の構築に参加する人間を育てること」(阿部・降旗, 2012)であるが、この目的に資する役割を水族館が担うためにはどうしたら良いか、というのが1つ目の問題意識である。
② 教育の対象者について、小中学生や親子を対象としているものが多いと思われる。発表者は以前より、環境教育は環境問題を扱い、その環境問題は喫緊の問題であるため、環境教育はまず現在の意思決定者である大人を対象に行う必要があると考えている。また、障がい者など社会を構成しているすべての人を対象とすることも重要と考えている。この対象者問題と対象者に合わせた教育内容が2つ目の問題意識である。
③ 体験型のプログラムとして環境教育的なプログラムを実施している園館は多いと思われるが、「展示」に環境教育の目的までを意図して埋め込んでいるところはまだ少ないのではないだろうか。常設の展示があってこその水族館であることから、この展示における環境教育をどう進めるか、が3つ目の問題意識である。
④ 環境教育・保全教育・ESD・SDGsなど、似たような用語がたくさんあり、若干混乱することがあるのではないだろうか、というのが4つ目である。
⑤ 水族館での環境教育についての研究が少ない。また、水族館での教育プログラムの評価の仕方についての研究も少ない。これは発表者自身の反省を込めて、5つ目の問題意識である。
これらの問題意識について、先行研究や実践例などを通して考えたい。
● 未来への展望
上にあげた問題意識について考えること、研究することは、これからの水族館での環境教育を進める上で重要だと考えている。
水族館の使命は「生物多様性の保全を中核とした持続可能な社会を作ることへの貢献」(大和,2023)だと考えられる。そのための視点として、「経験による学び」「地域に根ざした教育」「インクルーシブ教育」が重要になってくるのではないだろうか。