マスメディアを介した情報発信に教育普及効果はあるか

マスメディアを介した情報発信に教育普及効果はあるか

○石川訓子、大和 淳、岩尾 一、加藤治彦

(新潟市水族館マリンピア日本海)

 

新潟市水族館マリンピア日本海では、展示生物の情報をマスメディアへ発信する際、教育普及目的から、種についての生物学的な情報を提供するようにを心がけている。しかし情報提供の教育普及効果をこれまで検証してこなかった。今回、試行的ではあるが、検証を試みたので報告する。なお検証は正答率を調査するものではなく、解答の選択に注目した。

当館では1990年の開館以来初めて2019年7月29日にカマイルカが出産し、同年8月29日より一般公開を行っている。プレスリリースは、5月13日(妊娠とイルカショー中止の予定)、7月30日(出産とショー中止継続)、8月1日(ショー再開)、8月7日(母仔の報道機関先行公開)、8月26日(一般公開)と計5回行い、多くのメディアで取り上げられた。また地元テレビ局により妊娠・出産準備・分娩・育児と一連を収録した密着番組が8月16日に放送された。

調査期間は9月7•8日の2日間、カマイルカの親仔を観察した来館者を対象とした。調査はアンケート形式で、調査項目は、出産に関する事前情報の有無、情報入手先、生物学的なクイズとした。クイズの設問は、視覚的情報3問(②分娩方法・③背びれ・⑤色)と非視覚的情報2問(①妊娠期間・④生存率)計5問を3択とした。

アンケートは151人から回答を得た。回答者の78.8%がカマイルカの出産を来館前から認知しており、そのうち58%が情報入手先をマスメディアとしていた。回答者をマスメディアからの「情報あり」と「情報なし」の二群に分け、クイズの設問ごとに独立性の検定としてχ検定を行なった。またメディアの情報が解答選択に与えた影響として、選択肢ごとに寄与した割合(「情報あり」の解答割合-「情報なし」の解答割合)/(「情報あり」の解答割合)を求めた。

結果①妊娠期間、②分娩方法、③背びれに関しては、情報の有無にかかわらず期待値以上の偏りが見られ、また正答に寄与した割合は正(21.0%、15.9%、8.4%)であった。一方⑤色に関しては、「情報あり」の方が偏りがなく、正答に寄与した割合は負(-9.4%)であった。④生存率に関しては、「情報あり」にのみに偏りが見られ、解答ア(生存率20%)と解答イ(生存率50%)に寄与した割合が正(7.82%、5.69%)となり、解答ウ(生存率80%)は寄与したら割合が低く(-40.47%)なったことから、情報を得ていた方に「生存率は高くない」という印象として伝わっていると推察された。

マスメディアの教育普及効果は、ある程度期待できるが、数値のような正確な情報を伝えるのは難しい。ただ今回のアンケートは、回答者が来館者という時点でバイアスがかかっている可能性が高く、一般を反映しているとは言い難い。設問と合わせて調査方法の検討も必要である。

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