屋外展示施設「にいがたフィールド」の概要と生物について

2019年 JAA 第2回水族館研究会

展示課 田村広野,野村卓之,平山 結

 新潟市水族館マリンピア日本海には,新潟市近郊の陸水環境を再現し,築山や里域の水辺環境などから構成される敷地面積3,400㎡の屋外展示施設「にいがたフィールド」がある.2013年7月に設置し,2018年12月末で約5年半が経過したビオトープである.「にいがたフィールド」の概要と生物について紹介する.
 里域の水辺環境は,地面を掘削して遮水シートを埋設し, 小川・ため池・田んぼ・湧き水・砂丘湖の5つの環境を再現している.総水量は約120㎥,最大水深は1mである.湧き水部分に井戸水,砂丘湖部分には中和した水道水を供給し,各水域は小川でつながりポンプ循環を施している. 水温は, 湧き水部分では年間を通して14℃前後と安定しているが,その他の場所では気温の影響を受け0.0℃~39.0℃の範囲で変動している. 水生植物はアサザやトチカガミ,バイカモなど, 魚類はシナイモツゴやホトケドジョウ, トミヨ属淡水型など, レッドリスト選定種を含めた在来種を半自然的な環境で成育させている.これらの多くは自然繁殖し,定着して生息域外保全にも資されている. また, 導入生物以外にも様々な生物群が来訪し,一部は定着している.一時的に索餌に訪れるホンドタヌキやサギ類,繁殖で水域を利用するカルガモやモリアオガエル,定着したシオカラトンボ,クロイトトンボなどである.トンボ目は、現在8種が定着している.2014年には最多の13種が確認されたが,多くは水生植物等に随伴して移入したと考えられ,2016年以降は新潟市の市街地で見られる種に収束した.一方で,国外外来種のオランダガラシやタイワンシジミなどの侵入も起きている.
 植物の成長や枯死,優占種の増殖,外来種の侵入,水域間での土砂の移動などが生じ,展示の維持には,除草,剪定,落ち葉処理,外来種駆除,泥上げ,水位調節など,日常的な管理が不可欠である.
「にいがたフィールド」は,四季折々の多様な水辺環境を身近で安全に体験ができる場である.今後も,希少生物の保全と周辺に生息する生物も利用できる健全な展示環境を維持し,活用していきたい.


     
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