飼育下におけるロクセンスズメダイの育成

2015年 第60回水族館技術者研究会

展示課 西村祐加里,澁谷こず恵,新田誠

ロクセンスズメダイAbudefduf sexfasciatusは,神奈川県三浦半島~琉球列島の水深1~20mに生息するスズメダイ科オヤビッチャ属の魚類である.2014年6月に水量40㎥,水温21.5℃の水槽で擬サンゴを産卵床とした自然産卵が観察されたため,育成を開始した.本報告は,2015年8月29日に採取した卵から仔稚魚の育成にともなう個体の形態変化を記録したものである.卵は,孵化直前に産卵床ごと取り外し,500Lパンライトに収容した.飼育水は循環させ, 起流ポンプ(Koralia 5200:Hydor)を用いて5秒間隔で水流を当てた.照明は30W蛍光灯を日中のみ点灯した.孵化後は,産卵床を取り出し,仔魚の育成を行った.飼育水は循環させ,冷凍ナンノ(K-2:クロレラ工業)を15g/日添加した.照明は24時間点灯し,稚魚期以降は夜間に消灯した. 水温は,仔魚の成長促進を目的に,卵管理時は約27℃,仔魚育成時は約28℃に設定した.15日齢で育成個体が2個体となったため,以降の記録は生体観察とした.孵化後0-12日齢まで栄養強化(SCP:クロレラ工業)したS型ワムシを給餌し,11日齢からは強化アルテミアを併用給餌した.卵は長径1.32±0.03mm,短径0.59±0.10mm(n=5)の繭型をした付着沈性卵で卵黄が赤色を呈していた.産卵から最初の孵化までは,121時間を要した.孵化仔魚は,全長2.89±0.03 mm(n=5)で,油球(0.26±0.03mm)が卵黄(0.44±0.01mm)の腹面前方に位置していた.黄色素胞が卵黄上部および眼の後端から第3筋節にかけて密に見られた.口の形成は認められたが開口はしていなかった.開口は12時間後に確認された. 16日齢で1個体が着底し,稚魚期への移行が推測された.着底直後の体色は全身黒色を呈し,模様は認められなかった.23日齢で黒色横帯が4本出現し,25日齢で5本となった.30日齢で尾鰭上下両葉に黒色帯が現われ,成魚と同様の体色を示した.

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