ゲンタマイシンを筋肉注射したハンドウイルカにおける治療薬物モニタリング

2010年 第16回日本野生動物医学会

展示課 ○岩尾一、村井扶美佳、鶴巻博之

アミノグリコシド系抗生剤ゲンタマイシン(GM)には腎毒性があるため, 投与時は治療薬物モニタリング(TDM)の実施が推奨されている(Papich And Riviere, 2007)。 Enterococcus faecalisによる腎盂腎炎に罹患しているハンドウイルカ(210kg)に, アモキシシリン(25mg/Kg, PO, Bid)と同時に, GMを筋肉注射で投与した。

GMの目標血中濃度はピーク値20μg/Mlとし, 家畜間のアロメトリー分析から推定したGM分布容積(Vd)(206ml/Kg)(Martin-Jimenez And Riviere, 2001), 90%と仮定したバイオアベイラビリティ(BA)に基づき, 実投与量を4.8mg/Kg, Sidと決定した。TDMはGMの投与開始5日目に, 筋肉注射後の4つの採血点(0, 1, 3, 6時間後)で実施した。結果, ピーク値の実測値は14.1μg/Mlとなり, BAは61.2%と推定された。

消失半減期(T1/2), BAで補正したVd, クリアランス(Cl)は1.45時間, 202.6 Ml/Kg, 96.65 Ml/Kg/Hとなった。トラフ値は検出限界以下で, 血液や尿検査で腎毒性は認めなかった。家畜と比較し, T1/2, Vd, Clは大きく違わなかったが, BAは低くなった。理由として注射部位からの薬剤の漏出あるいは推定よりも分布容積が大きかった可能性が考えられた。同系薬のアミカシンを筋肉注射した他種の鯨類でも, 類似したBAの低さが報告されている(KuKanich Et Al, 2004)。

鯨類でのアミノグリコシド系薬の投与量を適切に設計するためには, 静脈注射時のデータとの比較が今後必要である。

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