シナイモツゴの遺伝的変異個体群と飼育下保存

2002年 第47回水族館技術者研究会

展示課 加藤治彦、鶴巻博之、山田篤、小川忠雄、鈴木倫明
東京水産大学 渡邊精一

シナイモツゴは、絶滅危慎IB類(環境庁、1999)に評価される日本固有亜種である。本亜種の保全に資するため遺伝学的集団解析を行った。
新潟県内外18地点から得られたモツゴ属3タクサ324個体を用い、アロザイム電気泳動法による遺伝学的解析を行った。集団間の遺伝的類縁を解析するため12個体群の遺伝子頻度をもとに、Neiの遺伝的距離を求め、 UPGMA法を用いてクラスター分析を行った。

分析の結果、シナイモツゴ6個体群とウシモツゴ1個体群の2亜種で1クラスター、モツゴ5個体群は別クラスターとなり形態による分類と整合した。一方、シナイモツゴ6個体群内の1個体群が他の個体群と遺伝的に大きく異なっていること(Nei’s D=0.108)が示された。この遺伝的相違は、推定された7酵素10遺伝子座の内、LDH-2遺伝子座の対立遺伝子の完全置換に基くもので、本亜種の遺伝的形質に隻団による変異があることが示された。
本個体群は、遺伝的撹乱防止のため他個体群との隔離が必要である。新潟市水族館では、本個体群のみを飼育下保存の対象とし、2001年9月28日に65個体を野生生息域より導入、2002年8月31日現在,約200尾の繁殖個体を保持している。今後、飼育下での単型化の対策、生息環境のモニタリング、保全啓発活動などが課題と思われる。

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