新潟市水族館の役割としてのシナイモツゴの分布調査

1995年 第40回 水族館技術者研究会

展示課 ○加藤治彦

「絶滅のおそれのある野生生物」シナイモツゴ Pseudorasbora pumila pumila Miyadi は コイ目コイ科ヒガイ亜科モツゴ属の小型淡水魚で、「絶滅危惧種」ウシモツゴの基亜種である。 分布域は関東、東北地方とされているが、最近では新潟、山形、秋田、宮城4県での残存情報があるに過ぎない。 新潟市水族館では、1995年9月28日から10月26日にかけて、新潟県内及び隣接域における本亜種分布の現況を知るため調査を実施した。 調査は、自然保護センターとしてシフトしつつある水族館のパラダイムの中で、 「絶滅のおそれのある種の個体群とその自然生態系の保存を支援する活動」を行う 「分布域に立地する水族館の果たすべき役割の一分野」として位置付けられる。

目的:
1)野生生物の分布調査が水族館の恒常的な活動となった場合のコスト算出のための基礎データの収集。
2)シナイモツゴの分布状況の把握。

方法:
調査地では、水質測定及び捕獲器(セルビン、網素材のドウ)と手網による採集を行った。採集されたモツゴ属魚類 は双眼実体顕微鏡下で観察し、側線を標徴に、完全なものをモツゴ、不完全なものをシナイモツゴと同定した。

結果:
調査8日間で、総調査地数は43、調査費用は1回当たり約3千円であった。シナイモツゴは43調査地中9地点で採集され、 43調査地中3地点でモツゴが採集された。シナイモツゴとモツゴが同一調査地で採集されることはなかった。

 

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