イルカの健康管理

展示課 鶴巻博之

 ハンドウイルカは体重200-300kgの水生の大型哺乳動物です。たとえプールのような比較的狭い水域でも、泳いでいるイルカを安全に捕まえるのは困難であり、仮に網を用いても、動物、人ともに溺れてしまう危険性があります。またプールの水を抜いてしまう方法もありますが、イルカが興奮により暴れて自分自身や周りの人を傷つけてしまうことがあります。これらの危険を避け、水生種であるイルカを安全かつ健康に飼育するには健康管理のための行動訓練がとても重要です。

イルカの訓練には、「オペラント条件付け」という行動形成法を用います。ショーの種目を作り出すだけでなく、イルカの健康管理にも同様の行動訓練が応用されます。体温測定や体重測定、呼気、胃液、血液、便、尿の検査、心電計センサーの装着、薬剤の注射などを安全に行なうために、それぞれ特定の姿勢を維持する訓練を行ないます。

体温測定

毎日2回、行なっています。測定には、電子温度計を用います。イルカをプールサイドに沿って仰向けに浮かせ、直腸にコード状の感温部を約30cm挿入します。計測値が安定するまでの数分間は仰向け姿勢を維持させます。イルカの体温は36~37℃で、ヒトと同様に平熱よりも高い場合は体調不良が疑われます。
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体重測定

週に一度行なっています。大きな平板状の体重計をプールサイドに設置し、その上へ自主的にイルカが載るようにして測定します。測定中に尾ビレが水中に入っていると正確な数値が得られないため、体重計の上で尾ビレを水面上に持ち上げた姿勢で静止させて測定します。
餌量の調節や慢性疾患の発見に役立ちます。
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血液検査

イルカをプールサイドに沿って仰向けに浮かせて行ないます。皮膚の上からも見やすい尾ビレの血管に注射針を刺して採取します。
血液検査では健康状態を詳しく調べることができ、内臓疾患や感染症などの発見にも役立ちます。
病気の治療に役立てるほか、血液中の性ホルモン濃度を測定して繁殖周期を把握することなどに取り組んでいます。
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呼気検査

イルカがプールサイドに自主的に上がり、静止するようにして行ないます。頭頂部にある噴気口に寒天培地の入ったシャーレをかざし、サインにより呼気を出させて、その飛沫を採取します。
細菌を培養して薬剤感受性テストを行い、気管支系の病気の発見や治療に役立てます。

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胃液検査

プールサイドにイルカを定位させて、口を開けた状態で静止させて行ないます。チューブを口から胃に1mほど挿入し、胃液がチューブ内に入ってきたところで抜き取ります。
胃液のpHや胃液に含まれている赤血球、白血球、上皮細胞などを調べて、胃炎や潰瘍などがないか判断します。異常が疑われた場合、内視鏡検査を行います。

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尿検査

イルカを横向きの姿勢でプールサイドに上陸させ、自主的に排尿するのを待ちます。排尿が確認されたらイルカの体に付着した海水が尿に混入するのを防ぐため、排泄溝付近の海水をきれいな布などで拭き取ってからコップで採取します。
採取した尿は、色調・尿比重・採尿量・pH・タンパク・糖・潜血反応・尿沈渣・電解質濃度などを調べて、泌尿器系の病気の発見や治療に役立てます。
尿採取は、週に一度定期的に行っています。検査の継続によるデータ分析の結果、イルカの尿性状が把握できるようになってきました。

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糞便検査

イルカを横向きの姿勢でプールサイドに上陸させ、自主的に排便するのを待ちます。排便が確認されたらビニール製のチューブを直腸に20㎝ほど挿入して採取します。
餌の消化状態、寄生虫の有無、腸内細菌などを調べて、腸の病気や治療に役立てます。

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筋肉内注射

イルカを横向きの姿勢でプールサイドに上陸させ、背ビレ付近の筋肉に直接注射針を刺して薬液を注入します。注射の途中で水中へ戻ると、確実に薬を注入することが出来なくなるため、自主的に水中へ戻ることが出来ない位置まで横向き姿勢を持続した状態で移動させて行います。
イルカが病気になり、薬を服用することが出来なくなったときなどに行います。

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