鯨類における腎機能マーカーとしての尿中N-アセチルβ-D-グルコサミニダーゼの有用性

2011年 第17回日本野生動物医学会

展示課 岩尾 一, 加藤 結, 榊原陽子, 鶴巻博之1, 田原正義, 南雲 綾, 長谷川 泉, 村井扶美佳, 山際紀子

尿中N-アセチルΒ-D-グルコサミニダーゼ(UNAG)活性の上昇は尿細管上皮の傷害を反映し、腎臓の機能異常の早期マーカーとして用いられている。UNAGが鯨類の腎機能マーカーとしても有用か検討するために、腎機能が正常な鯨類(ハンドウイルカ Tursiops truncatus(Tt)雌3頭、カマイルカ Lagenorhynchus obliquidens(Lo)雄1頭)、および、ネフローゼ症候群による慢性腎不全を発症したTt雌1頭より採取した尿のUNAG活性を測定した。UNAG活性を尿中クレアチニンで補正した指数(U/G)で表すと、Tt雌の正常尿で3.1±2.4(平均値±SD)(N=12)であった。Lo雄のUNAGは、尿中精子の出現と一致した上昇が見られ、雄性生殖器由来NAGの混入が疑われた。腎不全のTtのUNAGは、ネフローゼ症候群の発症前9.9だったが、発症後、最大50.2まで上昇し、ステロイド投与により13.6 まで低下し、末期腎不全での死亡時には236.9に再上昇した。UNAG測定は鯨類の腎機能評価に有用と考えられたが、雄個体の結果は慎重に解釈すべきと思われた。

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