ハマクマノミを用いて検討した海産仔稚魚展示の試み

2010年 第54回水族館技術者研究会

展示課 ○ 新田 誠

海産仔魚の展示は,分散や繁殖習性などの生活戦略を解説する上で効果的である.しかし,①強い水流や打撃などの物理的刺激に対して脆弱である,②仔魚や餌料の流出を防ぐ目的から止水飼育が適しているが,水質改善に大量の換水が毎日必要となる,③個体が小さく肉眼的に視認しにくいなどの飼育展示上の諸問題があり,従来は展示が困難であった.この度,改善策を施した常設展示水槽にて,孵化直後のハマクマノミの展示を試み,良好な結果を得たので報告する.

展示には角型のアクリル水槽(L600×W300×H400㎜)を使用し,刺激を軽減するためにパネル板で隔てて設置した.観察面は透明アクリル板で覆い,水槽ガラス面との間に約2㎝の空間を設けた.育成方法は,止水飼育による透明度の低下や,換水時に起こる持続展示の中断を防ぐために濾過循環式とした.循環水は25.0℃前後に加温した.循環水量は,仔魚への流速の配慮と餌料の流失防止を考慮して,水温保持の必要量まで極力抑えた.仔魚の流出防止には,排水口をスポンジフィルターで覆い,周囲の排水速度を低下させた.対象が小さいため,水槽上部へ仔稚魚の発生段階を示すスケッチを表示し,顕微鏡下の卵発生などの映像を小型のデジタルフォトフレームで自動再生した.

展示水槽への循環水量は,100~300(ML/分)の注水で,飼育水温,餌料の残存率,稚魚期までの生残率を調べた結果,約150mL/分(換水率3.1回/日)が適量であった.循環水量150 ML/分で飼育展示した結果,水温24.3±0.1℃ (循環水温25.5±0.1℃,室温22.2±0.2℃),餌料として約20個体/MLで投与したシオミズツボワムシの24時間後の残存率は平均44.3%であった.稚魚期までの生残率は22.2~29.0%であり,比較で止水飼育した際の稚魚期までの生残率3.1~9.9%を上回った.展示面では,未成魚や産卵中の親魚に隣接して展示することで,生活史を理解し易い効果が得られた.

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