ゴマフアザラシ新生仔の腸炎および後天性臍ヘルニア治療例

2009年 関東・東北ブロック水族館飼育技術者研究会

○ 田村 広野1),山﨑 幸雄1),岩尾 一1),小田 史彦2)
( 1)新潟市水族館マリンピア日本海,2)ノブ動物病院)

新潟市水族館では2009年3月18日に野外の展示水槽(水量300m3)の陸場でゴマフアザラシ Phoca largha が出産し,同所を柵で仕切り他個体と隔離して母獣と新生仔(雄,出生時:体長59㎝,体重8.04㎏)を飼育した。3月20日(2日齢)の朝に嘔吐と黄褐色水様下痢を示し,衰弱に陥った。下痢便のグラム染色とレントゲンの結果から,クロストリジウム属細菌による腸炎と産生ガスによる鼓腸症と推定された。

一時,危篤状態になったが,保温,皮下補液,浣腸,鎮痛剤,ステロイド剤,抗生剤による治療を行い,夕方には回復した。乳糖の異常発酵が発症原因と疑い授乳制限を行うため,夜間は新生仔を母獣から離して室内で飼育した。3日齢早朝,臍帯脱落部から腹壁まで達する直径約5mmの穴が開き,大網(腸間膜の一部)が5cmほど露出しているのを確認した。同日午後,動物病院にて吸入麻酔下で腹壁切開による臍ヘルニア整形術を施した。屋内飼育を継続し日中は適時,母獣の所に連れて行き授乳させ夜間は室内に戻した。腸炎および術創のため8日齢まで抗生剤注射を実施し,同日から母獣との同居飼育を再開し夜間も母獣に哺育,授乳させた。

術創の治療には毎日,抗生剤軟膏を塗布し11日齢に抜糸を行った。腸炎の治療は2日齢には胃カテーテルで整腸剤,電解質液,ブドウ糖液の投与を行い,3日齢は抗生剤,整腸剤,ブドウ糖液,エスビラックリキッド犬用(以下:エスビラック),4日齢から10日齢は抗生剤,整腸剤,エスビラック,水生哺乳動物用粉ミルクとした。18日齢より軽度の下痢が再発したため,20日齢まで抗生剤,整腸剤,エスビラックを投与した。4月11日(24日齢)に離乳に至り,体重は18.46㎏であった。

後天性臍ヘルニアの発症原因は,鼓腸症で腹圧が増加したことによる臍帯脱落部の脆弱化が一因と考えられた。

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